おじいさんと僕

小学校の帰り道に小さな個人医院がありました。
ある日の帰り道、その個人医院の手前の垣根に膝をついてもたれかかる年配の男性がいました。
何事かと思い、「大丈夫ですか?」と近寄ってみたものの、どうやらうまく話せない様子。
肩を貸して立ち上がらせようとするもまったく立ち上がれる様子はありません。
でもこのままじゃダメだと思った若かりし頃の僕は「救急車呼びましょうか?」と提案してみました。
そのおじいさんは「呼ばなくていい」という素振りを見せてきました。
最悪、こうなったら大人を呼んでくるしかないと思い、「おうちどこですか?」とたずねてみました。
そしてそのおじいさんが指をさした先には、その個人医院がありました。
よくよく見たらこのおじいさん、小学校に定期検診にくる先生でした。
「え?先生じゃん!なんで?」と疑問に思う若かりし頃の僕。
そしてよくよく見ると顔が赤い。
その時少年は気づいたのです。
「先生、ベロ酔いしてるんだな」と。
仕方ないから無理やりかついで家の玄関口まで引きずり、無事帰宅していただきました。
こういうことって、小学校にお礼の電話とか入ったりして、次の日クラスで発表されたりすることあるじゃないですか。
だから僕も子どもながらにませていて「明日先生にほめられるのかな」とかひとりでウキウキしていましたが、何事もありませんでした。
この時からです。
「もう人に親切にするのはやめよう」と思ったのは。

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