理不尽を受け入れよ

「初めて社会人になった時、最初に教えてもらったのは、『理不尽を受け入れなさい』ということだった。」

僕が初めて社会人になって間もない頃、新入社員研修の役員インタビューの中で、元リクルート出身という肩書きを持つ役員の方が、新入社員全員の前でそのように話をされていたのを今も覚えている。
その方は俳優の奥田瑛二をさらに強面にした鋭い雰囲気があり、『理不尽を受け入れなさい』というフレーズからは冗談の色を感じることは出来ない。
その場にいた全国から集まった数百人の僕の同期たちに一気に緊張感が走った気がした。

『理不尽を受け入れなさい』という箇所だけを切り抜くと、まるでこれから僕らが奴隷扱いされてしまうのでは?とブラック企業感満載で、何か恐ろしくとんでもないことを言われているのではないかと錯覚してしまうが、彼曰く、「最初は理不尽を受け入れることを覚えなさい。そしていつか自分で仕事を選べるような人物になりなさい。」ということだった。
社会人一年目の僕にも、この方が今この位置に辿り着くまでに並々ならぬ努力とドラマがあったんだろうということは理解できた。

他にも色々と僕らのためになる貴重なお話をされていたのだと思うけど、『理不尽を受け入れるとは何か』という素朴な疑問と、『理不尽を受け入れる』というフレーズで僕の頭はいっぱいだった。

その時に僕が『理不尽を受け入れるとは何か』ということの問いに対して持った答えは、営業職という仕事の性質上、または職種のイメージ上の問題で、肌感覚ではあるけど、上司から何か指示や命令が出た時に、しのごの言わずにまずやって、とにかくやり遂げなさいということと解釈した。
過度な言い方をしてしまえば、『黙ってやれ』というようなことを漠然とその時はイメージしていた。

僕はまだ今より若くて無知だったし、入社前に度々行われた内定者研修によって、社会という戦場に赴く企業戦士として完全に仕上がっていた。
そしてさらに、『東京』『IT』『上場』『ベンチャー』というその時代を象徴するキーワードにもだいぶ冒されていたのだと思う。
僕という社会人一年目の企業戦士は、『理不尽を受け入れる』ということに対しての受け入れ態勢がもはや万全だった。

そしてこの『理不尽を受け入れる』という考え方は、この時から長い年月をかけて僕の中で大きくなり、僕を支える行動指針となった。

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